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【エキスパートが解説】ノーコード/ローコードAIアプリ開発ツールで何ができる?選定時に気を付けることは?

企業で生成AIの活用が広がるのに伴い、業務部門が生成AIの助けを借りてアプリケーションやワークフロー、AIアプリ、チャットボットなどを手軽に作れるツールとして「ノーコード/ローコードAIアプリ開発ツール」への関心が高まっています。ノーコード/ローコードAIアプリ開発ツールを使うとAIのどんな支援により、どのようなアプリを作れるのでしょうか。また、ツールを選定する際、特に注意すべきことは何でしょうか。代表的なノーコード/ローコードAIアプリ開発プラットフォームである「Microsoft Power Platform」を例にご紹介します。


プロフィール

小西 菜子(こにし なのこ)
DXソリューション本部 モダンアプリソリューション部
クラウドコンサルティングG クラウドコンサルティングT

前職でPower Platformによるシステム開発の経験を積んだ後、より上流工程から携われる点に魅力を感じて2024年1月にパーソルクロステクノロジー入社。現在は非IT企業の顧客に対して、アプリ開発や業務自動化におけるPower Platformの活用を支援している。

AIの支援で業務部門が手軽にアプリやAIアプリを開発

ノーコード/ローコードAIアプリ開発ツールとは、プログラミングに詳しくない業務部門の担当者が、生成AIの支援を受けて手軽にアプリを開発したり、生成AIを利用したアプリを簡単に作ったりできるツールです。ノーコードツールでは部品を組み合わせてプログラミングなしでアプリを作ることができ、ローコードツールでは部品の組み合わせとわずかなプログラミングで、より高機能なアプリを作成することができます。

ノーコード/ローコードAIアプリ開発ツールを選ぶ際のポイント

今日、さまざまなノーコード/ローコードAIアプリ開発ツールが提供されており、これから導入するご担当者はどれを選ぶべきか迷うかもしれません。一般に、自社に適した製品を選ぶための観点(要件)としては次のようなものが挙げられます。

  • 利用目的:どのような目的/用途で使うのか

  • 機能:どのような機能が必要か

  • ユーザーのスキルレベル:ツールを使うユーザーのITスキルはどの程度のレベルか

  • 初期/運用コスト:導入や運用にかけられるコストはどのくらいか

  • データの管理性/権利:AIに読み込んだデータが他社向けAIの学習に使われることはないか

  • 他システム連携:他のどういったシステムとの連携が必要か

  • 提供形態:ツールはオンプレミスで閉じて使いたいのか、クラウド型でもよいのか

  • セキュリティ/コンプライアンス:自社のセキュリティ/コンプライアンス規約に準じて利用できるか

  • サポート:提供元ベンダーからどのようなサポートが提供されているか

いずれも重要な要件ですが、なかでも気を付けていただきたいのが「社内ですでに利用しているアプリやシステムとの連携が可能か」という点です。多くの場合、ツールの導入目的は業務生産性の向上であり、それを実現するには現在の業務で利用しているシステムとの連携が不可欠です。もし連携できないツールを選んでしまうと、本来は効率化したい業務を手作業でやらなければならなくなってしまうのでご注意ください。

また、一口にノーコード/ローコードAIアプリ開発ツールと言っても、ツールによって用途や得意な作業が異なります。初めにツールでやりたいことを明確にして、それに合ったツールを選ぶことも大切です。

マイクロソフト製品との親和性が高いノーコード/ローコードプラットフォーム「Microsoft Power Platform」

続いて、代表的なノーコード/ローコードAIアプリ開発ツールとして、Power Platformの「PowerApps」「Power Automate」「Copilot Studio」の3製品をご紹介します。これらはMicrosoft OfficeやTeams、SharePointなどとの親和性が高く、マイクロソフト製品を利用している企業にとって導入しやすいことが大きな特徴です。

PowerApps ─ 生成AIが統合されたローコードアプリ開発ツール

PowerAppsは、マウス操作で簡単にアプリの画面などを作ることができるローコードアプリ開発ツールです。プログラミングの経験がない方でも、ボタンや表、チェックボックスなどの画面部品をビジュアルに配置していくことで画面を作ることができます。

PowerAppsはさまざまな画面テンプレートが公開されており、それらを利用すれば大抵の画面はすぐに作ることができます。ローコードツールであるため、ボタンが押された際に行う処理などは自分でコードを書く必要がありますが、先頃、マイクロソフトのAIアシスタント「Microsoft 365 Copilot」が統合され、AIの支援を受けながらアプリを作れるようになりました。例えば、プロンプトに「○○○なアプリを作ってください」といった指示を書くと、Copilotが自動的に部品を配置して画面を作り、必要なコードまで書いてくれます。

また、自動生成されたコードや他のメンバーが書いたコードの内容がよくわからないときは、Copilotに「このコードはどういう処理をしているのですか」と聞くと教えてくれます。プログラミングに詳しくない方も、自分がやりたいことをCopilotに指示して、わからないことはCopilotに聞くことで、どんどん上達していけるのではないでしょうか。

Power Automate ─ AIアプリも作れるワークフロー自動化ツール

次にご紹介するのは、PCで行っている日常的な業務をワークフローにして自動化するPower Automateです。PowerAppsはアプリの画面を作成するためのツールですが、Power Automateはその裏側の処理を作るツールといった棲み分けになります。例えば、上長への申請やメール添付ファイルの指定フォルダへの保存など、日常業務で頻繁に発生する作業を自動化します。

Power AutomateにもCopilotが統合されており、作りたいワークフローをチャットで指定すれば自動的に作成できます。また、Power Automateは機能が豊富なため、ワークフローを作るのにどれを使えばよいか迷うことが多くあります。そんなときは、Copilotに「ワークフローにこんな機能が欲しい」と聞けば、最適な機能を自動的に追加してくれます。

さらに、別途有償ライセンスが必要となりますが、Power AutomateではAI構築ツール「AI Builder」を利用することもできます。AI BuilderはノーコードでAIを作成できるツールであり、作成したワークフローの中で動的に文書や画像を受け取って生成AIで解析することで、より複雑な処理を行うことができます。

私たちのチームでも、お客様のFAQサイトの構築などでAI Builderを活用しています。例えば、Power Automateで作った回答ワークフローの中で、WordやExcelで作られた業務文書をAI Builderに渡し、ユーザーから質問への回答に当たる内容を抽出して表示するといったことが行えます。顧客アンケートの集計ワークフローの中で回答文書をAI Builderに解析させ、その内容がポジティブなものかネガティブなものかを判定させるといった使い方もできます。

Copilot Studio ─ AIで回答を自動生成できるチャットボット作成ツール

3つ目のCopilot Studioはチャットボット作成ツールです。生成AIが顧客と対話しながら課題解決に導くサービスを、マウス操作で作ることができます。WordやPDFなどの形式の業務文書をAIに読み込ませて自動的に回答を作らせることも可能です。

Copilot Studioの便利な点は、既存のWebサイトを1つ指定すれば、その中のコンテンツやWord/PDF形式の文書を自動的に読み込んで解析し、それらのデータに基づいて回答を自動生成してくれるところです。実際に私たちがPower Platformの導入や活用をご支援する際は、Power Platformに関する技術文書が公開されているMicrosoft LearnなどのWebサイトを指定してチャットボットを作り、ユーザーがわからないことがあるときはそこで質問してもらっています。これにより、ヘルプデスク業務の負担を大きく減らすことができました。

組み合わせればさらに高度なアプリ開発が可能に

このようにPower Platformにはさまざまなノーコード/ローコードAIアプリ開発ツールがラインアップされていますが、これらは組み合わせて使うことでより大きな効果を発揮します。

例えば、Power Appsは単体でさまざまな画面を作れますが、裏側で複雑な処理をするときはPower Automateを使う場面が増えるでしょう。PowerAppsで作ったアプリ画面をユーザーが操作したとき、その内容をTeamsやメールで他のメンバーに通知したいといった場合、通知処理はPower Automateで作るのが一般的です。

Copilot StudioとPower Automateも同様です。Copilot Studioによるチャットボットでは、「ユーザーからこういう質問を受けたら回答フローを分岐する」といった処理を組むことができます。分岐先の処理で込み入った回答を作る際には、Copilot StudioからPower Automateを呼び出し、さらにその中でAI Builderを使って回答文を生成させ、それをCopilot Studioを介してユーザーに返します。

使いながら学べるPower Platformの解説書を刊行

Power Platformは今後もAIとの統合が強化され、さらに便利で強力なアプリプラットフォームとして進化していくでしょう。それにより、プログラミングが苦手な方も、手軽に複雑で高度なアプリを作り、AIアプリを利用してさまざまな業務を効率化していけると期待しています。

私たち自身は、お客様が安心してAIを利用できる環境作りに力を入れていきます。例えば、「セキュリティが不安」「導入して自分たちで本当に使いこなしていけるのか」と悩む方は多いでしょう。それらについて、実際にどのくらい使えるものなのかを私たち自身で確かめ、情報発信していきたいと思います。

その一環として、今年6月に刊行された書籍さわって学べるPower Platform Copilotを監修しました。この書籍ではPower PlatformやCopilotを初めて使う方に向けて、AIを使ったアプリ開発やAIアプリの作り方を一から解説しています。実際に自分で手を動かしてアプリやAIを作りながらツールの仕組みや使い方を学べるように構成していますので、「Power PlatformやCopilotに興味がある」「これから使う」といった方は、ぜひ本書の内容を参考にしてください。

さわって学べるPower Platform Copilot
価格:3,080円(税込)
著者:大澤 文孝 著、パーソルクロステクノロジー株式会社 モダンアプリソリューション部
技術監修発行:日経BP

また、Power PlatformやCopilotなど最新のAI製品を活用したシステム開発に関心がある、AIを活用したシステム開発を通じてさらに成長していきたいという方は、ぜひ私たちと共に企業のDXを推進していきませんか?


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