【エンジニアのエキスパートが解説】エンジニアが陥りやすい「伝わらない説明」の罠、どう克服する?
ITエンジニアにとって、技術的なスキルと同様に重要なスキルとして「コミュニケーションスキル」が挙げられます。リモートワークの浸透、生成AIの普及などによってITエンジニアの働き方や役割が大きく変わりつつある今、このスキルの重要性がさらに高まっています。
なぜ説明がうまく伝わらないのか?そして、どうすればこの罠を克服できるのか?私自身の経験を基に具体的な事例を交えてお話しします。
プロフィール
リモートワークの浸透でコミュニケーションスキルの重要性がさらに高まる
リモートワークが普及する中で、私たちエンジニアは「伝わらない説明」という問題に直面しています。対面でのコミュニケーションが減り、ジェスチャーや表情といった視覚的な情報が不足することで、言葉だけでの伝達が求められるようになりました。実際、あるプロジェクトで顧客との打ち合わせがオンラインのみで行われた際、曖昧な説明が原因でシステム設計の方向性が大きく逸れてしまい、後に大幅な修正を余儀なくされたケースがあります。こうした問題を通じて、説明の明確さがより一層重要であると痛感しました。
「伝わらない説明」を克服するための3つのポイント
1.曖昧な説明を避ける
リモート環境も多い昨今、事前に情報を整理し、具体的な根拠を持って説明する力が不可欠です。ソリューションのご提案でも、お客様にとって何がメリットなのかを論理的に説明しなければ納得していただけません。また、コミュニケーションにおいては「癖」を排除することも重要です。曖昧な表現を多用することで、相手に不安を与えることがあります。かつて私も「一旦」や「多分」といった言葉を使いがちでしたが、今では意識的にこれらを避け、明確な言葉で伝えるように心掛けています。
2.情報を視覚化する
言葉だけのやり取りでは、情報の伝達には限界があります。口頭での説明のみで進行してしまった場合、メンバー同士やお客様との間で理解が分かれ、後続のフェーズでトラブルに発展してしまう場合もあります。そのため、情報の空中戦は避け、テキストベースの情報に落とし込んだり、図や表を活用し、視覚的に情報を共有することで、相手との共通理解を深めることは極めて重要です。
3.相手のITリテラシーに合わせる
説明を行う際には、相手のITリテラシーに合わせた言葉を選ぶことが非常に重要です。顧客に対して、専門用語を多用してシステムの説明を行った結果、顧客が内容を十分に理解できず、プロジェクトが滞ってしまう事態は多くのエンジニアが一度は経験したことがあるケースではないでしょうか。専門用語を避け、相手の立場に立った、分かりやすい言葉で説明することが、効果的なコミュニケーションの鍵であることは間違いありません。
聞く力の重要性
エンジニアとしてのキャリアを築くうえで、「伝える力」だけでなく、「聞く力」も同様に重要です。特に、コンサルタントやITアーキテクトを目指す場合、このスキルが成功の鍵となります。伝える力は報告を通じて育ちますが、聞く力は意識的に鍛える必要があります。
例えば、要件定義の際にお客様の話をエンジニアの視点でまとめてしまうと、本質的な情報が欠落してしまう可能性があります。「リモートでの通信品質が良くない」という課題に対して、原因がネットワークにあるのか、ヘッドセットにあるのか判断するためには「音声がプツプツ途切れる」、「声が小さい」といったお客様自身の表現が問題を切り分けるポイントになります。最初はお客様が直感的に感じていることをそのまま話してもらい、お客様の言葉で受け取ることが大切なのです。
お客様の言葉を吟味したら、自分の言葉に置き換え、理解が正しいかどうかを確認する力も求められます。自分の言葉に置き換えるのは難しいと感じるかもしれませんが、肝要なのはお客様と共通認識を持つことです。間違いを恐れずにアウトプットし、その理解が正しくなければ別の表現を探るという試行錯誤が重要です。
生成AIの進化により、エンジニアの役割は上流工程へとシフトしています。AIがコーディングを担う時代には、人間はビジネスを深く理解し、お客様の課題を正確に聞き取り、最適なシステムを提案できる役割と能力が求められます。聞く力を磨くことで、エンジニアとしての価値が一層高まると考えています。
組織運営と対顧客でのコミュニケーション
組織運営や顧客とのやり取りにおいて、コミュニケーションスキルは成功の鍵を握る重要な要素ですが、組織内外での具体的な取り組みの中で特に重要なものとして、以下があると考えています。
実践的なスキル向上のための場作り
ITエンジニアの中には、技術スキルを高めることは得意でも、積極的な発言やお客様とのコミュニケーションは苦手な方もいると思います。私は、組織内のコミュニケーションスキルを向上させるために、定期的に勉強会やナレッジ共有会を開催し、過去に上司から学んだコミュニケーションの質を高める具体的なテクニックを共有しています。例えば報告のタイミングや、相手に応じた報告方法など、実践的なスキルを伝授することで、メンバーが実務で直ちに役立つスキルを習得し、組織全体のパフォーマンスが向上していることを実感しています。全員参加の報連相スキル強化
若手だけでなく、ベテラン社員にも報連相(報告、連絡、相談)のスキル強化が求められています。現在の若い世代は、コミュニケーションにおいて優れた素養を持つ一方で、報告スキルは意識的に磨いていく必要があると感じています。報告のテンプレートを活用し、論理的かつ明確な報告を繰り返し練習することで、全員が一貫性のあるコミュニケーションを身につけ、組織の効率を高めることが可能であると信じています。論理的なコミュニケーションスキルを向上させるフレームワーク
組織運営はもちろん、お客様に向けたコミュニケーションでは、やはり論理的かつ一貫した聞き取りと伝達を行うことが重要だと考えています。「6W3H(いつ、誰が、誰に、何を、どこで、なぜ、どのように、いくら、どれだけ)」のようなフレームワークを活用することで、曖昧な表現を排除し、正確で効果的なコミュニケーションを実現することができています。明確な報告で信頼関係を構築
日々の業務を通じて、コミュニケーションスキルの欠如が引き起こすトラブルの多さを痛感するエンジニアは少なくないのではないでしょうか。特に日本語は主語を省略しがちで、責任所在が不明瞭なまま報告がされてしまうことがあります。その結果、実際には私たちの責務ではないことに対してクレームにつながってしまったこともありました。こうしたリスクも防ぐためにも、誰が何を行ったのかを明確に伝えるスキルが必要であると考えています。要件定義の精度がプロジェクトを左右する
顧客との要件定義は、プロジェクトの成功を決定づける重要な段階です。多くの場合、顧客の要望は漠然としたものになりやすく、いかに具体的な仕様に落とし込むかが重要です。要件定義が不十分だと、後の工程で「想定と違う」といったトラブルが発生しやすくなります。私は、初期段階で正確に聞き取り、明確に伝えることがプロジェクト成功の鍵であると強く感じています。
日々の生活の中でも意識してコミュニケーションスキルの向上に努めよう
現在のITエンジニアはシステムを作ることに特化した方が多いかもしれません。しかし、お客様にとってシステムは手段の一つに過ぎず、それがビジネス上のメリットを生むから私たちに仕事をお任せいただけるのです。今後、AIがコーディングのような技術面で大きな役割を果たすようになるのだとしたら、私たちはお客様のビジネスを理解し、不満や課題を吸い上げて、最適なシステムを提案・設計するスキルをより高めることが重要なのではないでしょうか。
私自身は今後もコミュニケーションスキルの改善につながる活動やナレッジ共有をできるだけ行っていきたいと考えています。コミュニケーションスキルは仕事以外の場面でも重要ですし、日々の生活の中で意識して行動することで高められる要素もあるでしょう。
エンジニアとしてさらに成長し、コミュニケーションスキルを武器にキャリアを飛躍させたい方、ぜひ私たちと共に、次のステージで挑戦しませんか。
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