【マネジメントの現場から】プロジェクトの成功に絶対欠かせないこととは?ここだけは押さえておきたい4つのチェックポイント
パーソルプロセス&テクノロジー(以下:パーソルP&T)のシステムソリューション事業部は、「テクノロジー活用による人と組織へのエンパワーメント」というミッションを掲げ、多種多様なITプロジェクトを通じてお客様のビジネス変革に貢献しています。今回は、コンサルティングフェーズからシステム開発までワンストップでサービスを提供するエンタープライズソリューション統括部でプロジェクトマネジャーを務める窪田裕好さんに、「成功するプロジェクトマネジメント」の条件について寄稿してもらいました。
こんにちは、エンタープライズソリューション統括部の窪田裕好です。
私は、2002年にパーソルP&Tに中途で入社し、小規模の改修プロジェクトから長期に渡る大規模の開発プロジェクトまで、40件ほどのプロジェクトに携わってきました。そのうち10件ほどのプロジェクトでは、プロジェクトマネジャーを務めており、毎回「プロジェクトを成功させるためには、何が必要なのか?」と、知恵を絞りながら奮闘しています。
現在は、開発メンバー100人を超えるような大規模のプロジェクトを率いつつ、マネジメント初心者や経験が浅いプロジェクトマネジャーのサポートもしています。
これまでプロジェクトマネジャーを経験する中で、「成功するプロジェクトとそうでないプロジェクトは、どこで差がつくのだろう?」と改めて考えた結果、見えてきたポイントがいくつかありましたので、今回フェーズごとに解説させていただきます。
◆ポイント1:提案書はお客様の課題を“正確に”把握し、決裁者を見極めてからつくる
<提案前に、課題についてお客様と合意形成を取る>
まず、気をつけたいのが、お客様から依頼書をいただいたときです。時間がないからと慌ててすぐに提案書をつくり始めるのは失敗の元になります。書面上の要望を鵜呑みにせず、一度、課題についてお客様と認識をすり合わせましょう。
「お客様の課題が、依頼書だけではクリアになっていない」のは、珍しいことではありません。そのため、課題を深掘りし、どのような背景から生まれ、どのような課題があるのかを正確に把握する必要があります。
このステップを怠ると、提案内容が本質を捉えていない解決策になりかねないので注意が必要です。
<提案書は「キーパーソン」を意識してつくる>
実際に提案書をつくる際は、「キーパーソンに響く内容であるか」という点を意識します。
メンバーの企画・提案書をチェックしているとき、内容自体は適切であっても「誰に向けた提案なのか」が分かりづらいものもあるため、クライアントの中で決裁権を持つ人を把握し、その相手によって推すポイントを変える必要があります。
経営陣に提案する場合は、投資価値を表現する。情報システム部などの現場の方に提案する場合は、どのように生産性が上がるか、作業負荷が減少するかをわかりやすく伝える。そのポイントにあわせ、競合他社が分かる場合は、お客様が比較しやすいようにコストや実績の見せ方を工夫する。「判断する人にとって重要なのは何か」がポイントです。
◆ポイント2:トラブルの原因はシンプル。勝敗を決めるのは、初期の「計画」と「コミュニケーション設計」
<キックオフ時から、計画の細部まで手を抜かない>
プロジェクト進行中にトラブルが発生する理由は、実はシンプルです。その原因は主に2つあって、1つは「十分な計画が練られていない」ことです。
私がリーダーシップ論で参考にしている孫子の『兵法』には、「計画性がないものは戦うな」という言葉があります。プロジェクトもそれと同じで、キックオフ段階の計画次第で全てが決まるといっても過言ではありません。
フェーズごとのリスクにきちんと対策が織り込まれているか。チームの体制は技術力を補い合えるようになっているか。お客様との役割分担は明確になっているか。
プロジェクトの初期段階から、人員配置やスケジュール管理の細部まで、計画と確認に手を抜かないことが大切です。
<最初にコミュニケーションのルールを決める>
プロジェクト進行でもう1つトラブルの原因になりがちなのは、コミュニケーションのすれ違いです。ただし、これは、最初に「ルール」を決めることで回避できます。
実はかつて、週次で行う定例報告で話す内容を特に決めていなかったため、メンバーが1週間分の作業内容をつらつらと話すだけで、チームコミュニケーションが多いとは言えない時期がありまして。その結果、小さな火種を見つけられず、プロジェクトの炎上一歩手前まで差し迫ったことがありました。
こうした事態を未然に防ぐため、現在では、単に「状況を随時知らせてください」とメンバーに伝えるのではなく、コミュニケーションのルールをプロジェクトの最初にしっかり定義することを徹底しています。
メールやSlack、進捗会議のルールとして「どういうときに、誰に何を報告すればよいか」を具体的に決めておけば、メンバーは何を報告するべきか迷うこともないですし、情報の取りこぼしも防げます。
早期に異変に気付くためにも、コミュニケーションは「仕組み化」しておきましょう。
<問題が発生したら、プロジェクトマネジャーが率先して優先順位を決める>
それでも、プロジェクトは変動的なものです。どれだけ準備していても問題が発生してしまうことはあります。
そのときは、プロジェクトマネジャーが先頭に立った「タスクの優先順位決め」が大切です。トラブルの対応を現場任せにすると、各々の価値観で動いてしまい、解決が遠のいてしまうからです。
プロジェクト全体を見渡す立場だからこそ、いざというときには問題解決に一番近い順番を見極め、メンバーに指示を出すようにしましょう。プロジェクトマネジャーは「判断する」ことが重要な役割なのです。
◆ポイント3:チームのモチベーションを保つため、リスクを取りつつ、適切なバックアップも
<「1つ上」の役割を与えて、人や組織を成長させる>
いうまでもなく、プロジェクトは「人」で動いています。長期にわたるプロジェクトも多いなか、アウトプットの質を保つためには、メンバーのモチベーションを維持する工夫が必要です。
そのために私がやっているのは、各メンバーに、あえて今より「1つ上」のスキルが必要な業務を割り振ることです。
人が育つ上で何より大切なのは、プロジェクトを通じて「できないことができるようになった」経験だと思っています。自分の成長を実感することはモチベーションになりますし、将来的な組織力の向上にもつながります。
もちろん、ただ高い目標を一方的に与えて突き放すわけではありません。スキル不足を補える技術力の高いメンバーや適切なパートナー企業をチームに加えたり、ナレッジを整理したり、成長のために必要な環境をあらかじめ整えます。
もし計画通りに進んでいなければ早めに気づけるように、日々の作業報告のチェックも欠かせません。
組織としてリスクを取りつつ、状況に目を配り、しっかりとバックアップしていく。長期プロジェクトで品質を維持するためには、そうした準備が大事だと思います。
<パートナー企業とも、Win-Winの関係をつくる>
大規模のプロジェクトでは、パートナー企業のエンジニアさんたちと共に開発を進める機会が多くあります。そのパートナー企業に関しても、単にこちらのお願いした業務だけやってもらう関係だとは思っていません。パーソルP&Tにご協力いただいている以上、そこにもまた「参加するエンジニアには、こんな成長をしてほしい」との要望があるはずです。社内外問わず、全員にとってWin-Winの関係づくりを常に心がけています。
◆ポイント4:お客様の期待に応えるのは当然。でも「守るべきところは守る」
<お客様と協力し合って問題解決に取り組む>
お客様との良好な関係構築には、前提として「QCD(クオリティーコストデリバリー)」をしっかりと守ることが必要です。「IT投資の価値があった」と十分に満足していただければ、競合他社が多いなかでも確実にお客様と繋がり続けていけるでしょう。
しかしそれは、「お客様からの要望は何でも受け入れる」という意味ではありません。トラブル発生時、お客様とパーソルP&Tの双方に責任が認められる場合には、きちんと話し合い、協力し合って改善に向かうようにしています。
開発はお客様と一緒にワンチームで進めるものですから、リソースや期間が限られる中で「できること」を正直に話し合わなければ、共倒れしてしまいます。
無理をして開発が成功しても、メンバーが不幸になってしまえば、そのプロジェクトは成功とは言えません。お客様の期待に応えるのは当然ですが、守るべきところは守る。そのバランスを取るのは、プロジェクトマネジャーの責任です。
<感情を共有しながらプロジェクトを進める>
さまざまな経験を積んできた結果、今でこそ私もこうしてノウハウをお伝えできますが、過去には炎上したプロジェクトの立て直しなどで大変な思いをしたことも多々あります。
最後に、これからプロジェクトマネジャーに挑戦する方や今お悩みの方に、私自身のこれまでの経験から得た、いちばんの教訓をお伝えしたいと思います。
それは、「このプロジェクトを失敗させたくない」「自分もできる限りのことはやるから、一緒に頑張ってほしい」という本心を正直に言葉にすること、そして行動でも示すことです。
機械的に仕事をするのではなく、「人間として、互いの感情をちゃんと共有しながら進めていけるかどうか」は、プロジェクトを円滑に進める上で、最も肝心な部分といっても良いかもしれません。そんな「人間らしく、本音で向き合える」プロジェクトマネジャーを目指すことで、プロジェクト成功への道が開けてくるのだと思います。
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